「有機溶剤作業主任者」とは一体どんな資格?
有機溶剤作業主任者は、特定の有機溶剤を扱う際に、必ず設置しなくてはいけないことが法律で定められています。
有機溶剤作業主任者になるためには、”有機溶剤作業主任者技能講習“を受講して、修了試験に合格しなくてはなりません。この技能講習に合格している状態のことを一般的には、「有機溶剤作業主任者の資格」を持っていると言います。また、この資格は国家資格です。
ほかにも、年に数回開催される国家試験を利用して有機溶剤作業主任者になる方法もあるようですが、メジャーではないため今回は技能講習についてを書いていきます。
有機溶剤作業主任者に選任された人は、特に閉鎖された空間において、労働者が安全に有機溶剤を扱うことができるように指導します。
「有機溶剤」というとなんだか固い言葉に聞こえますが、塗装工事や自動者整備の現場、ドライクリーニングの溶剤を扱うクリーニング業など、皆さんのよく知る身近なところでもよく利用されているものです。
有名な有機溶剤には、シンナーやトルエン、エタノールなどがあります。シンナーはプラモデルやペンキなどにも使われていますので、聞いたことがあるのではないでしょうか?
有機溶剤を扱う方であれば、是非とも取得しておきたい必須資格ですね!
必要とされる業種、仕事内容
塗装業

塗装業において、有機溶剤作業主任者の資格が必要となるケースはとても多いです。
中でも、シンナーやエチルベンゼンなどの溶剤が含まれる塗装材料は塗装業において、様々なシーンで必要となります。
分かりやすいところでは、建物の壁や床などの塗装などがあります。溶剤塗装と呼ばれる、「有機溶剤」を使用しての塗装は、乾燥することで表面に膜が出来上がり、塗装の耐久性が上がるために有機溶剤がよく使用されるのです。
自動車加工・整備業

自動車の加工や整備においては、特に板金塗装の場面で有機溶剤作業主任者の資格が必要となることが多いです。
特に自動車の塗装においては、一度に大量の塗装塗料を利用することもあるため、安全には注意する必要があります。
街の小さな自動車整備工場などで表面を塗装する際にも、同じく溶剤の含まれる塗装材料が使用されることが多く、自動車製造・整備関連の仕事で働くのであれば、是非とも有機溶剤作業主任者の資格を取得しておくべきだと言えるでしょう。
クリーニング業

意外にも有機溶剤作業主任者の資格が重宝されるのが、クリーニング業界です。
「一体クリーニングのどこで有機溶剤が使われているの?」という疑問が湧いてくるのではないでしょうか?
実は、クリーニング工場においてドライクリーニングの溶剤を利用することが、有機溶剤作業主任者の資格を必要とするケースが多いのです。
クリーニング業界での転職などを考えているのであれば、是非とも有機溶剤作業主任者の資格を取得しておくとアピールポイントとして活用できます。
化学工場

化学工場においては、有機溶剤作業主任者の資格はもっとも重宝されます。化学工場内で働くのであれば、是非とも資格を取得しておきたいですね!
有機溶剤を単体で扱う場合から、薬品、化学繊維、塗料、印刷などなど様々なジャンルの工場で有機溶剤作業主任者の資格が必要となり、大変重宝されます。
特に大量に有機溶剤を扱う現場であれば、大規模な事故にもつながりかねないため、責任も重大です。
そのほかにも有機溶剤作業主任者の資格が必要となるケースは多く、理系資格の中ではニーズも高く人気の資格と言えるでしょう!
有機溶剤作業主任者の年収は?
有機溶剤作業主任者の年収は、その職種によって大きく差は開きますが、300万~700万程度であると言われています。
実際に求人サイトなどで比較してみたところ、現場の施工管理の方がやや年収が低く、工場などでの研究開発員として勤務すると、年収がやや高くなる傾向があると思いました。
有機溶剤作業主任者の資格は、2日間の講習を受けて試験に合格することで比較的簡単に取得することが出来てしまいます。そのため、有機溶剤作業主任者の資格に加えて、プラスアルファでの経歴・キャリアが必要になってくるのではないかと思います。
【POINT】
有機溶剤作業主任者の年収は、300〜700万円程度と言われている。
対象となる薬品
有機溶剤作業主任者の資格が必要となる対象薬品は、その危険度によって、特別有機溶剤等、第一種、第二種、第三種の4種類に分類されています。
一般人の私たちからすると、まったく聞いたことのない溶剤も多いので、ここではそれぞれの細かい説明は省略いたします。
これだけ多くの溶剤を一度に扱う機会というのは少ないので、講習を受けて資格を取得したあとは、自分の利用することになる溶剤について、さらなる理解を深めていくということが求められているのではないかと思います。
特定有機溶剤等 | エチルベンゼン、クロロホルム、 四塩化炭素、ジオキサン ジクロロエタン、ジクロロプロパン、 ジクロロメタン、スチレン、テトラクロロエタン、 テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、 メチルイソブチルケトン |
第一種 | ジクロルエチレン、二硫化炭素 |
第二種 | アセトン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール イソペンチルアルコール、エチルエーテル エチレングリコールモノエチルエーテル エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート エチレングリコールモノ―ノルマル―ブチルエーテル エチレングリコールモノメチルエーテル ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン 酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル 酢酸エチル、酢酸ノルマル ― ブチル、酢酸ノルマル、 酢酸メチル、シクロヘキサノール、 シクロヘキサノン トリクロルエタン、トルエン、ノルマルヘキサン ブタノール、メタノール、メチルエチルケトン メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン メチル ― ノルマル―ブチルケトン |
第三種 | ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル 石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油 ミネラルスピリツト、前各号に掲げる物のみから成る混合物 |
技能講習の受験資格
有機溶剤作業主任者の技能講習は、18歳以上であれば誰もが受講する事が出来ます。
例外として、工業高校などに通っている高校生などは、18歳以下でも受講ができるようです。
技能講習の科目
技能講習の科目は、大きく4つの単元に分けられます。
それぞれの科目において法定の講習時間が決まっていて、計12時間の講習を受けたのちに、学科試験を受けるというような流れになっています。
講習の科目 | 時間 |
関係法令 | 2h |
健康障害と予防処置 | 4h |
衛生保護具 | 2h |
作業環境の改善 | 4h |
学科試験(修了テスト) | 1h |
修了試験の合格点
全講習科目において所定時間の講義を修了し、
修了試験において各科目40%以上、かつ全体での総合得点で60点以上の得点を取得することで合格となります。
技能講習の合格率
合格率は、90%を超えています!
修了時に学科試験のテストはありますが、講習を修了した修了証という意味合いが強いようです。しっかりと講習を聞いていれば、ほぼ確実に合格できるものと考えても大丈夫でしょう!
取得するメリット

私が実際に、有機溶剤作業主任者の技能講習を受講・合格して感じた2つのメリットをご紹介致します!
- 就職・転職・昇進などのキャリアアップに利用できる
- 作業環境について見直すいい機会になる
私の感じたメリットは、上記の2つでした。
基本的には、有機溶剤作業主任者の人数が足りないときに、資格を持っていることで有利になるケースが多そうですね!
建築・塗装業においては、自分一人の一人親方として働く方も多く、そういった際でも有機溶剤作業主任者の資格が必要になるケースも多いです。有機溶剤作業主任者の資格が必要な作業に従事する可能性があるのであれば、是非とも取得しておかなくてはいけないですね。
講習を受ければ合格してしまうような資格ですが、実際に作業主任者として活躍するためには、実際の業務においても経験を積む必要があると感じました。
とても危険で、責任のある仕事
取り扱う有機溶剤は、国家資格の保持者を必置としなくてはいけないほど、危険があるものなのです。
現場では実際に、中毒症状などで倒れてしまう人も毎年現れます。
取り扱いを一歩間違えれば死さえも引き起こしかねないため、業務に従事する際にはしっかりと気を引き締めて、適切な管理運営を行わなくてはなりません!
私の合格体験記
私は、実際に有機溶剤作業主任者の技能講習を受講して、修了証の資格を保持しています。講習を受けて試験に合格するまでの、体験記を書いていきたいと思います!
申し込みまで
技能講習は、全国各地の労働局が指定する登録教習機関で受けることができます。
私は、関東圏で有名な「技術技能講習センター」を利用しました。申し込みは、インターネットで行うことができます。
受講の準備と予習の有無について
受講に当たって、準備や予習などは何も行いませんでした。
有機溶剤を扱った経験もないため、完全なるノー勉・初見の状態です!
受講料
受講料は、13,280円でした。(講習代 11,300円,テキスト代 1,980円)
インターネットで申し込み後、2日で郵便物が届き、入っていた請求書を元に銀行振込みで払いました。届いた郵便物の中には受講証や申込書も入っています。
証明写真や身分証のコピーが必要となるため、受講までに準備しました。
講習1日目
講習は、神奈川県の技術技能センターの関内にあるセミナールームで受講しました。

1日目は朝8時半に集合して、9時から講義が開始となっていました。関内駅から徒歩3分くらいのところにあるので、電車を利用していきました。
一緒に受講しにきた人たちは、男性9割女性1割で、現場仕事をしてるような雰囲気の方が多かったという印象です。
受付をすませて、指定された席に座ります。
私が受験した時にはコロナウイルスが猛威を振るっておりましたので、体温チェックやマスクの配布なども行われて、おそらく通常時とは少し違った受付となっていました。

全く予習などはしない状態で講習を受けたため、席についた際に、わりと厚めのテキストが配られた時にはびっくりしました 笑
講義を聞いていると、どうやらテキストを全て覚える必要はないようです。
1日目の講義スケジュール
- 9:00〜10:00、1時間目
- 10:10〜11:10、2時間目
- 11:20〜12:10、3時間目
- 昼休憩
- 13:00〜14:10、4時間目
- 14:20〜15:20、5時間目
- 15:30〜16:30、6時間目
といった感じで、1時間おきに10分の小休憩が入り、昼休憩が別にあります。学生時代を思い出しますね 笑。
長時間、全く興味のない内容について講師の授業を聞いているので、とにかく眠くなりました!
講義中に昼寝してる人もちらほら見かけましたが、しっかりと話を聞いていないと、突如重要ポイントについての話をすることもあるため注意が必要です。
喫煙スペースや自動販売機も設けられていて、小休憩はしっかりと休憩できる感じではありました。復習などに追われることもなく、周りのみなさんもタバコを吸いにいったり、寝たりして休憩を過ごしていました!
【POINT】
・とにかく眠くなるので、休憩をしっかりと活用しないと寝てしまいます…
受講の時の服装は?

受講当日は、気軽に適当な私服で行っても大丈夫でした。
周りの人たちも私服でリラックスした感じです。作業服やスーツなどで行くと、浮いてしまうのではないでしょうか。
【POINT】
講習会は私服でOK!!
講習2日目
2日目の講義スケジュール
- 9:00〜10:30、1時間目
- 10:40〜12:10、2時間目
- 昼休憩
- 13:00〜14:00、4時間目
- 14:10〜15:15、5時間目
- 15:25〜16:20、6時間目
- 16:30〜16:40、休憩と修了試験の説明
- 16:50〜17:10、修了試験
- 17:30〜合格発表
2日目は、1日目とは少しだけ違うスケジュールでの実施となっていました。
2日目も、とにかく眠くなります 笑。
そして講義が全て修了した後に、修了試験を受講します。講義修了から修了試験までは間髪入れずに進みますので、最後の講義の時間で、内職して復習するといいと思います。
修了試験は、もちろん合格でした!合格発表の場で、即日修了証がもらえます。
受け取りの印鑑を押して、氏名や生年月日が間違っていないかを確認すると、帰ることができました。

勉強法と予習について
講習を受ける前に予習などをしていく必要は、一切ありません!
ノー勉の状態で技能講習へ向かっても、講義をとにかく真面目に聞いていれば、無事に修了試験に合格して資格を取得できると思います。
逆に、講義を真面目に聞いていないと、修了試験で落ちる可能性があると思います。
ただし合格後は、有機溶剤作業主任者として職務を果たさなくてはいけないため、何か事故が起きてからでは取り返しのつかないことになってしまう可能性があります。
実際に職務として作業に当たられる方であれば、しっかりと講義を聞いて、有機溶剤の危険性について理解しておく必要があると思います。
私から一つアドバイスする点としては、「試験をそこまでナメない方がいい!」という点です。私が受講した際にも、試験をナメていて落ちたという方が2割程度いました。しっかりと講義を聞いていれば、出るポイントはある程度重点を絞って教えてもらうことができるので、眠くなりますが、気合いで聞きましょう!
【POINT】
・講義前の予習は必要なしで大丈夫!
・2割くらい落ちている人もいたので、試験をナメてはダメ!
実際に受けてみた感想
今回私は、労働技能系の講習が初めてだったので、とても勉強になりました。
このあと受験が控えている、衛生管理者のテキストとも内容がかぶる箇所があったため、衛生管理者を受験する人のウォーミングアップにもなると思います。
これを機に、労働技能系の講習を少しずつ受講してコンプリートを目指していきたいと思います!